イスラエルという名を与えられたヤコブの12人の息子の1人がヨセフです。ヨセフはエジプトでファラオに仕えるようになり、エジプトの食料飢饉を未然に防ぎ、エジプトでナンバー2の宰相になったのです。そして、ヨセフを殺そうとした兄たちを赦し、父ヤコブと再会し、彼らと共にエジプトで暮らしたのです。しかし彼の心はエジプトにはなく、故郷に帰ることを望んでいました。
時代が移り変わって、ヨセフの偉業を知らないファラオによってイスラエル人は奴隷となり、そこに現れたのがモーセでした。彼は王家の一員として成長します。しかし、エジプト人を殺したことによって、エジプトを去り羊飼いとして生活していたところに、神の声と燃え尽きない芝を見て、エジプトから故郷カナンにイスラエルの人々を導く指導者となったのです。モーセは長い旅の途中で死に、ヨシュアという後継者によって人々は導かれ、エリコ攻略の際はラハブという女性に助けられ、彼女はのちのダビデ王の系図、更にはイエス・キリストの系図に名を連ねることになりました。
ヘブライ人への手紙の著者は、さらにギデオン・バラク・サムソンと言った士師と呼ばれた人々や、ダビデらの名を挙げて、神に導かれた人生を紹介します。そして、そのような歴史の表舞台を歩んだ人々ではない、苦しい人生を歩まなければならなかった人々もまた、ヘブライ人への手紙の著者は、思い起こすように読者に語り掛けるのです。彼らは、本当の宝を手に入れるために、いや手放さないために、苦難を受け入れたのです。「私たちの本国は天にある」とフィリピ3:20で使徒パウロは語っています。ヨセフがそうであったように、本当の故郷を目指して生きていきたい。本当の故郷につながる道を選んで生きていきたいのです。