エステル記はペルシャ帝国4代目の王であるクセルクセス1世の時代の物語です
が、主人公のエステルが女性であること、祈りの言葉が記されていないこと、異国
の王妃になっていることなど聖書の中では異色です。
ペルシャ帝国は、インドからエジプト、ギリシャに至る広大な領土がありました
が、そこにバビロン捕囚から解放された多くのユダヤ人が住み続けていました。あ
る時、王妃の退位事件があり、新たな王妃としてユダヤ人のエステルが選ばれたの
です。ここで新たな事件が起きました。それは、育ての親モルデカイがペルシャ帝
国ナンバー2 の宰相ハマンに不敬の罪で目をつけられてしまったのです。ハマンは
モルデカイだけでなくユダヤ人全てを根絶やしにしようと王に願い出て、布告が出
されました。モルデカイはこのことをエステルに伝え、ペルシャ王にその布告を撤
回させようとしました。この時エステルは死を覚悟しなければならないほどの重大
な選択を迫られます。王への謁見は王の許可が必要だったからです。
モルデカイは、こう語ります。「この時のためにこそ、あなたは王妃の位にまで
達したのではないか(4:14)」と。エステルは恐れながらも、断食して祈り、「わ
たしは王のもとに参ります。このために死なねばならないのでしたら、死ぬ覚悟で
おります。(4:16)」と決断をし、その勇気ある行動によって、ユダヤ人は救われ、
ハマンの陰謀は暴かれ、神の民は守られたのです。このことを記念し「プリムの祭
り」が行われるようになりました。
私たちの人生にも「この時のため」という場面があるかもしれません。私たちが
置かれている場所、仕事、家庭、人間関係の中で、「今こそ立ち上がる時だ」と示
される瞬間があります。主なる神様は、見えないところで働かれます。そして、あ
なたを今いる場所に置かれたのは、きっと意味があるのです。私たちも人生の中で
試練や決断を迫られるときに、自分の利益ではなく、エステルのように、「この時
のために」立ち上がる者でありたい。私たちも信仰を持ってキリストに従い、神様
の計画の中で生きることができるように願います。